選別・包装施設での野菜や果物の選別は非常に複雑です。サイズ、色、欠陥など、あらゆることを考慮しなければなりません。さらに、消費者の手に渡る製品の品質を保証するためには、この作業を極めて迅速に対応しなければなりません。以前、この作業はすべて手作業で行われ、多くの人々が果物を選別し、梱包していました。現在、この工程は大小の倉庫でマシンビジョンによって合理化されています。高品質の光学照明プラットフォーム、画像取得ハードウェア、および微調整されたソフトウェアを使用することにより、産業機械は正確な欠陥検出に必要な高品質の画像を得ることができます。このように、マシンビジョンは効率、品質、信頼性を大幅に向上させることができます。
小売業者や顧客によって、欠陥検出に対する要件は異なります。さらに、特に食品は、検査時点の状態によって賞味期限が異なります。非常にシンプルでありますが、欠陥の選別は人間の目に委ねられている以上、かなり主観的なものです。そして、特に梱包・包装工場に関しては、これらのすべての作業を迅速に行わなければなりません。医療業界とは異なり、完全な精度は要求されませんが、工程は素早く確実でなければなりません。1秒間に最大15個のリンゴを処理するコンベアを1台として、これに6つもしくはそれ以上のレーンと複数の機械を掛け合わせれば、毎日、毎時間、大量の製品が処理されていることになります。
産業現場での環境でもまた、欠陥検出が大きな課題となっています。梱包・包装工場は、ほこりや温度変化など、センサにとって非常に厳しい環境です。機械は40℃を超える温度で作動しなければなりませんし、細かいほこりなどが空気中に漂っていても機能しなければなりません。
現在、マシンビジョンは、手作業による目視検査に代わる欠陥検出のための重要な技術のひとつとなっています。このシステムは、光学機器やセンサを通して、実際の物体の画像を自動的に受信し、処理します。人間の知覚が電磁スペクトルの可視側に限られているのに対し、マシンビジョン技術はガンマ線から電波まで全スペクトルを網羅することができます。画像処理アルゴリズムと組み合わせることで、マシンビジョンは、従来の方法では不可能なレベルの精度、規模、速度で欠陥を検出することが完璧に実現できます。
マシンビジョンの欠陥検出効率の向上、リアルタイム性能の強化、手作業の削減といった能力は、大規模な産業プロセスにとって不可欠な技術となっています。そのため、マシンビジョンはインテリジェントな製造に関わる主要技術として浮上してきました。最近では、電圧、カメラ、信号、パルス、ソレノイドの不足など、あらゆるものにセルの診断機能がソフトウェアに搭載されています。ですので、システムの継続的な効率性と信頼性を確保することが必要な場合に、機械技術者や電子技術者に警告を発することができる数多くの自己診断機能が組み込まれていることが重要なポイントとなります。
産業現場におけるほとんどの目視検査システムは、光学照明プラットフォーム、カメラなどの画像取得ハードウェア、そして画像分類を実行する画像処理アルゴリズムで構成されています。画像処理と画像解析は、コンピュータが画像の特徴を理解し、分析し、画像の特徴に基づいて何らかの処理をする上で必要不可欠なものとなっています。
マシンビジョンシステムは、光学照明プラットフォームに紫外線、不可視光線、赤外線など幅広い光スペクトルを使用します。さまざまなライトが異なる欠陥に適しているため、テストが必要となります。しかし、マシンビジョンシステムは単に色を見るだけでなく、例えば果物のクロロフィル含有量など、化学成分を測定することができます。このようにして、マシンビジョンシステムは、色だけに頼るよりもはるかに正確に果実の成熟度を測定することができます。同じプロセスが欠陥にも起こり、何らかの跡やシミは異なる分光的特徴を生成します。センサを適用し、カメラやライトと組み合わせることで、欠陥検出はより広範囲になります。これは、外見に現れない腐敗にさえ有効です。赤外線のスペクトルの波長が適切であれば、問題がある品物に触れることなく、特定の種類の欠陥を検出することができます。
もちろん、光学照明システムやカメラがどれほど精巧であっても、それらは画像を作り出すだけです。コンピュータ・ソフトウェアがその画像を処理し、判断を下し、ソレノイドを作動させてコンベアから商品を取り除きます。そのためには、ハードウェア、ソフトウェア・プラットフォーム、ドライバ、ネットワーク・プロトコルなどが必要になります。システム・オン・モジュール(SOM)は、開発プロセスを簡素化し、センサ、カメラ、モノのインターネット(IoT)システムの組み込みを可能にするためによく使用されます。そのようなソリューションのひとつが、 Digi International ConnectCore® 93 システム・オン・モジュールで、医療、産業、エネルギー、輸送など幅広い用途向けに設計されています。Digi ConnectCoreモジュールはハイエンドのエッジデバイス向けで、コネクテッドデバイスや組み込みデバイスに産業の信頼性を提供するために理想的な高性能コンピューティングとカメラインターフェイスを提供します。注目すべきスペックには、Cortex-M33コア、人工知能/機械学習(AI/ML)Arm Ethos U65マイクロ・ニューラル・プロセッシング・ユニット、最大限の電力効率を実現するNXPパワーマネジメントICなどが含まれます。
当初はAIを使うことに多少のためらいがあったかもしれませんが、今では製造工程にますます導入されるようになっています。AI以前は、画像処理アルゴリズムの開発は、欠陥を検出するため、形態の分析、閾値の作成、測定と比較に基づいて行わなければなりませんでした。ほとんど全て手作業で行われ、最終的には試行錯誤の連続でした。AIとディープラーニングを利用すれば、何千枚もの画像を取り込み、それらを分類し、それらのデータでAIを訓練することが可能になります。
AIは人間の優柔不断さや主観性を取り除き、マシンビジョンシステムの信頼性を確保します。最初のトレーニングデータは非常に重要で、まだ手作業が必要ではありますが、毎年異なる要件やシステムが登場するため、ディープラーニング・アルゴリズムのトレーニングを継続することが必須です。しかし、常に画像を自動的に保存する機械を導入することで、変更が必要になったときに必要なデータを入手し、対応することができます。今後、産業環境における欠陥の検出と選別は、間違いなくAIが主流になるでしょう。
この記事を書いている時点では、これらの情報を処理するには、非常に高価なボードを搭載した非常に高性能なコンピュータが必要であり、これらは大規模な機械とシステムで成り立っています。将来的には、このような高度で高価なシステムはすべて、カメラ自体に内蔵される小型のシステムに組み込まれることになるのではないかと私は予想しています。何事もそうですが、大きなツールから始めて、それをより安く、より利用しやすいものにしていくことが大切です。その後、おそらく最終的には、欠陥を分類するのに5万枚の画像を必要としなくなると思います。マシンビジョンのトレンドがこのまま続けば、電子機器システムのコストが削減され、これらすべての要素が1つの全体的なシステムに統合され、すべてが簡素化されることになるでしょう。
欠陥検出におけるもう一つの大きな発展は、内部欠陥の検出です。例えば、農産物の分類では、分光計を使用することで、メーカーは果汁の量、糖分、脂肪分などの特徴を検出することができます。今のところ、こうした高性能センサは非常に高価で、常に点検を行うことは困難となっています。しかし、ユーザーの期待が高まるにつれ、こうした分光計ベースのセンサの使用も増え、メーカーはさらに高いレベルの顧客サービスを提供できるようになります。
欠陥検出は、特に食品の場合、長い間複雑なプロセスとなっていました。しかし、マシンビジョンは、欠陥検出を向上させるために必要な高品質の画像を得るため、高品質の光学照明プラットフォーム、画像取得ハードウェア、および精巧に調整されたソフトウェアを活用します。マシンビジョンシステムは、欠陥検出の効率、品質、信頼性を向上させ続け、特に将来的に技術が進歩し、新たに登場することが期待されています。