技術ジャーナリストのトミー・カミングスが、毎週、設計エンジニアにとって興味深い「旬の」トピックを取り上げます。
うちの幼い息子が空き部屋をVR(仮想現実)用に使うようになってから、我が家では、家にいながらにして世界中を冒険できるようになりました。
ヘッドセットをつければ、F1グランプリに参戦することも、飛行機で大空に絵を描くことも、世界中のあらゆる都市や名所を巡ることもできるのです。しかもわずか9平米ほどの小さな部屋にこもったままで。
マーケティングのおかげで、VRはゲームや多次元体験に活用され、今やエンターテイメント業界を大きく牽引する技術となっています。しかし、VRにできることは、エンターテイメントやゲームだけではありません。
人工知能やプログラミング言語の絶え間ない進化により、医療をはじめ、自動車、教育、宇宙・防衛、建築、デジタルマーケティング、労働安全、社会科学・心理学、観光など、さまざまな分野においてVRは大きな変革を起こしています。
VRによって、実際の救急現場ではなくても、医師や看護師のための綿密な救急処置訓練が可能になります。自動車業界では、道路シナリオや車両挙動を解析する機能の開発でVRの活用が進んでいます。
教育分野では、VRによる360度動画や3Dスキャンモデルを使って、博物館や遺跡内の通常足を踏み入れることのできない場所にも移動することができます。
このようなVRの開発を行なうには、高度なAI機能を備えたデバイスが不可欠になります。
今週のニューテック・チューズデーでは、Bosch、Advantech、AxiomtekのAIデバイスおよびセンサを紹介します。
慣性計測ユニット(IMU)を内蔵したBoschのBHI260AP自己学習型AIスマートセンサは、常時接続アプリケーションに最適な汎用性の高いソリューションです。メインプロセッサの処理タスクのオフロードに役立つさまざまなソフトウェア機能を統合した自己学習型AIソフトウェアを搭載しています。センサには、フィットネストラッキング、ナビゲーション、機械学習分析、方位推定などの常時接続センサアプリケーション向けAIが組み込まれており、ソフトウェアは30秒以下でアクティビティを学習します。手首に装着するウェアラブル、ヘッドマウントデバイス、スマートフォン、拡張現実/仮想現実/複合現実のヘッドセットやコントローラーデバイスに最適です。またBHI260APは、ジョギング、ジャンプ、水泳など、あらかじめプログラムされているアクティビティを認識します。リストバンドに使用すれば、歩数、ストロークの長さ、装着者の泳法を識別することができます。
AdvantechのVEGA-340エッジAI加速度モジュールは、ビデオ監視、医療診断、マシンビジョンなどのビジョンアプリケーションにプラグアンドプレイのAI推論機能を提供します。エッジコンピューティングからクラウド配信まで、ビデオインフラパフォーマンスを向上させます。VEGA-340は、メディア業界の要求に準拠した低消費電力デバイスです。標準的なディープニューラルネットワークのハードウェアアクセラレーションを備えており、複数のビデオストリームに対応する拡張性があります。モジュールに搭載されたIntel® Movidius™ Myriad™ X VPUは、画像処理、コンピュータビジョン、ディープラーニングに最適です。 また、本モジュールは、前世代と比較して10倍の性能を実現しています。
NVIDIA® Jetson™ Nanoを 搭載したAxiomtekのcAIE100-903-FLエッジAIシステムは、AI・エッジコンピューティング、スマート小売、スマートシティなどのアプリケーションに最適です。このボックスシステムは、NVIDIA® Jetson NanoモジュールでUbuntu 18.04 OSを動作させます。147.4mm x 129.8mm x 34.6mmと超小型で、15W GbE PoE(Power over Ethernet)ポートを搭載しています。重さ1kgの本システムは、動作範囲-30℃〜+50℃、 耐振動性3Grms、非結露湿度耐性10%~95%を備えています。さらに、半屋外のアプリケーション向けIP42規格防水ケースのオプションがあり、低温・高湿環境に対応します。
VRにはまだまだ無限の可能性があります。エンターテイメントやゲームの世界ではすでにその活用が進んでいますが、開発者がさらに豊富なVR体験を生み出し、創造できるよう、メーカーは幅広いデバイスのラインアップを提供しています。
トニー・カミングスは、米国テキサス州在住のフリーランスライター兼編集者。ジャーナリスト歴は40年以上におよび、 現在、Texas Monthly誌、Oklahoma Today誌にて執筆中。過去にDallas Morning News紙、Fort Worth Star-Telegram紙、San Francisco Chronicle紙などでの執筆経験を持つ。シリコンバレーのドットコム・ブームを取材し、さまざまなメディアでデジタルコンテンツやオーディエンスエンゲージメント編集に携わる。2018年から2021年までマウザー・エレクトロニクスにてテクニカルコンテンツ・プロダクトコンテンツ・スペシャリストとして勤務。