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新たなAI革命の始まりか? ChatGPT出現でコアハードウェア競争が一触即発 Mouser Electronics

 

春風が一夜にして花を咲かせたかのように、ChatGPTは登場して以来たちまち世の中の話題を席巻し、AI(人工知能)ブームを巻き起こしています。マイクロソフト、Google、Amazon、Baiduなどのテクノロジー大手はこれを受けて、AI競争への参入を宣言しています。

AIスタートアップのOpenAIが昨年11月30日に公開した新型のAIチャットボット「ChatGPT」は、瞬く間に人気を博し、生成AI(Generative AI)の分野で社会現象を引き起こしています。OpenAIの評価額も上昇し、一時は290億ドルに達しました。今年1月末には、マイクロソフトがOpenAIに複数年にわたる10億ドル規模の投資を行うことを発表しました。

生成AIとは、さまざまな機械学習(ML)手法を使用してデータから要素を学習し、学習データを複製するのではなく、類似性を保った全く新しい人工物(製品、物、タスク)を生成するAI技術を指します。ChatGPTは、数百万ものウェブサイトから情報を収集し、対話型かつ人間に近い方法でユニークな回答を生成することにより、論文の執筆やコードの作成、ビジネスプランの設計、セラピストとしての活動など、さまざまなサービスをユーザーに提供することができます。その優れたチャット能力と驚異的な精度により、一気に世界中の多くのユーザーを獲得しており、大規模自然言語モデルにより汎用人工知能の扉を叩き、AI産業化の新たな道を切り開くことが期待されています。

データ分析企業PitchBookが発表した資金調達レポートによると、生成AI企業は2022年に米国で前年比35%増の約9億2,000万米ドルの資金を調達しています。2023年に入ると、マイクロソフトがOpenAIに投資した数十億ドルを除いて、多くの生成AI企業が累計で7億米ドル以上の資金を調達済み、または交渉しています。

 

生成AIの台頭:小規模モデルから大規模モデルへ

「ChatGPTは素晴らしく、AIは最高の時代を迎えました」と、中国工程院の院士である王堅氏は、最近のフォーラムで語っています。同氏は、自然言語処理がいくつかのキーポイントを経てきたと指摘しています。初期の自然言語処理は基本的にロジックを用いており、統計的手法を利用することは、大きなブレークスルーだったと言えます。その後、インターネット上のデータを学習データとして使えるようになると、さらに大きな変化がありました。

マイクロソフトのナデラCEOは、「これほど大きなテクノロジーの波を目にしたのは生まれて初めてです。AIGCは産業革命に匹敵します。マイクロソフトはChatGPTをすべての製品に統合します」と語っています。そして、常に「AI脅威論」を唱えてきたイーロン・マスク氏は、「ChatGPTは実に驚くべきものであり、強力で危険なAIまでの距離はそう遠くない」と改めて述べています。

チャットボットは、そもそも新しい製品ではありません。ChatGPTの前にも、マイクロソフトの「Xiaoice」、Appleの「Siri」、Xiaomiの「小愛同学」、Alibabaの「Tmall Genie」など、すでにさまざまな製品が市場に登場していました。たとえば、Xiaoiceはソーシャルプラットフォームで人間と多言語で会話したり、歌ったり、詩を書いたり、絵を描いたりすることができます。しかし、Xiaoiceは2014年の誕生以来、ChatGPTのような爆発的な発展を遂げていません。

同じ質問回答型のチャットボットでも、Tmall Genieや小愛同学といった他のAI製品のような一問一答型とは異なり、ChatGPTはトレーニングセットの中に存在する知識をすべて持ち、言語生成能力を備えているため、擬人化したコミュニケーションが可能です。最も直感的な印象として、ChatGPTのほうが「人間的」です。

たとえば、AとBのどちらが優れているかを質問すると、ChatGPTの回答パターンは「それぞれに長所がある」といった表現をする傾向があります。また、1時間以上チャットをしていると、「話しすぎています。あとでもう一度試してみてください。」という「人間的」なフィードバックをすることもあります。

「人間の感情で意思疎通を図ること」を常に学習しているようであり、これは人工知能にとって大きな飛躍です。そして、この飛躍を支える重要な技術基盤となったのが、「大規模言語モデル」(LLM)です。

この突破口までの道のりは決して容易ではありませんでした。アルゴリズムはLLMの成功の第一条件であり、次に大量のデータをアルゴリズムに「供給」する必要がありました(データ量の飛躍があって初めて、より多くの機能につながるため)。そしてさらに重要なのが、強力な「エンジン」、つまり強力な計算能力です。この3つは、基本的なLLMを獲得するのに欠かすことができない要素です。

モデルが大きくなるにつれて、AIは人間と同レベルの結果が出せるようになり、その後は、人間を超えるレベルを目指すようになります。統計によると、これらのモデルのトレーニングに使用される計算量は、2015年から2020年にかけて6桁増加し、文章、音声、画像認識、読解、言語理解において、人間のレベルを追い越す結果となっています。

これは、「効率化ツール」から「生産ツール」へ、単純な複製から新しいオリジナルの創造へという、新世代のAIテクノロジーの方向性を表しています。つまり、判断するだけでなく、創造することもできるということで、これは生成AIがもたらす重要な変革です。AIの活用に構造変化が起こることを意味します。ガートナー社は、生成されるすべてのデータのうち、生成AIが占める割合は現在の1%未満から2025年までに10%に達すると予測しています。

セコイア・キャピタル社の2人のパートナー、ソーニャ・ホァン氏とパット・グレイディ氏は、「Generative AI: A Creative New World(生成AI:創造的で新しい世界)」と題した記事で、生成AIがより高速に、より安価になるだけでなく、場合によっては人間よりも優れたものを作り出すと指摘しています。ソーシャルメディア、ゲーム、広告、建築、プログラミング、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、法律、マーケティング、販売など、かつて人間の創造性を必要としていたあらゆる業界が、機械による再創造の対象となります。ある機能は生成AIによって完全に置き換えられるかもしれませんが、ある機能は人間と機械が短いイテレーションを繰り返す創造的なサイクルの中で発展する可能性があります。

そして人々が待ち望んでいるのは、「生成AIが創造と知識労働の限界コストをゼロにし、膨大な労働生産性と経済価値、そして相応の市場価値を生み出す」ことです。セコイア・キャピタル社によると、生成AIは何十億もの人間の労働力の効率と創造性を少なくとも10%以上向上させ、これまで以上に高速化・効率化させるだけでなく、能力も強化させると推定しています。そのため、生成AIは数兆ドルの経済的価値を生み出す可能性を秘めています。

主な生成AIの用途とツール一覧表

転換点の出現?

では、なぜ今、生成AIが爆発的な進歩を遂げているのでしょうか。その理由は、より良いモデル、より多くのデータ、そしてより多くの計算能力にあります。

セコイア・キャピタル社によると、これまでの生成AIの進展を振り返ったとき、大まかに4つの波があったと言います。

第一の波:小規模モデル(small models)が主流(2015年以前)

小規模モデルは、言語を理解するという点において「最先端」であると言われています。これらの小規模モデルは分析的なタスクを得意とし、納期予測から詐欺分類まで幅広いタスクに使用することができます。ただし、一般的な生成タスクには十分な表現力がありません。

第二の波:規模拡大の競争(2015年~現在)

Google Researchの画期的な論文「Attention Is All You Need」では、自然言語理解のための新しいニューラルネットワークアーキテクチャであるTransformerについて説明しており、より強力な並列性で高品質の言語モデルを生成することができ、必要なトレーニング時間が少ないことが示されています。これらのモデルは単純な学習者であり、特定のドメインに合わせて比較的容易にカスタマイズできます。

第三の波:より良く、より速く、より安く(2022年以降)

計算能力がより安価になり、拡散モデル(diffusion models)などの新しいテクノロジーで、トレーニングや運用のコストを削減しています。研究者はより優れたアルゴリズムやより大規模なモデルの開発を続けており、アプリケーションが急増し始めました。

第四の波:キラーアプリの出現(現在)

携帯端末がGPSやカメラ、ネットワーク接続などの新機能を通じて新しいタイプのアプリケーションを解き放ったように、大規模モデルは生成AIアプリケーションという新しい波を刺激しています。

10年前、モバイルインターネットの転換点が、一部のキラーアプリによって市場にもたらされたように、生成AIのキラーアプリが登場します。

ChatGPTの登場が、この転換点であるのかもしれません。いずれにせよ、レースの始まりを告げる合図は既に鳴り響いています。

 

ハードウェア競争が重要な戦いに:AIチップ市場の展望に期待

技術原理の観点から見ると、ChatGPTはGPT3.5アーキテクチャをベースに開発された対話型AIモデルであり、GPT1/2/3のイテレーションを経て、GPT3.5モデル以降ではコードトレーニングや命令のファインチューニングが導入され始め、RLHF(人間フィードバックによる強化学習)技術も加わり、能力の進化を実現しています。その中で、有名なNLPモデルの1つであるGPTは、Transformer技術をベースとしており、継続的なモデルのイテレーションに伴い、レイヤー数が増加し、計算能力に対する要求も増大しています。

運用条件の観点から見ると、ChatGPTが完璧に動作するためには、「トレーニングデータ+モデルアルゴリズム+計算能力」の3つの条件が必要です。その中で、トレーニングデータは技術的障壁が比較的低く、人的・物的・資金的リソースを十分に投入することで入手できます。基本モデルやモデルチューニングは計算能力に対する要求が比較的低いのですが、ChatGPTの機能は基本モデルでの大規模な事前学習が必要であり、1,750億個のパラメーターから知識を蓄積するため、多くの計算能力を必要とします。

総合的に見ると、計算能力がChatGPT運用の鍵となっています。コンピューティングを支援するGPUCPU+FPGAなどが、ChatGPTを支える「影のヒーロー」となります。

TrendForce社の最新レポートによると、ChatGPTを支えるGPTモデルを例として挙げると、トレーニングパラメーターが2018年の約1億2,000万から2020年には約1,800億に急増していました。TrendForce社では、2020年に学習データの処理に必要なGPUの数は約2万個でしたが、今後商用化に向けて必要となるGPUの数は3万個を超えると予測しています(注:この計算はNVIDIA A100に基づいています)。

今後の大規模モデルの動向に伴い、計算能力とデータ伝送における指数関数的な需要増加が見込まれるAIチップ市場の成長が期待されます。現時点でAIチップ市場全体の展開を見ると、NVIDIAが主導するGPUがその高い計算能力により主流となっていますが、ASIC、DPU、FPGAなどの他のAIチップも可能性を秘めています。

 

まとめ:

未来の可能性

10年前のSF映画『her/世界でひとつの彼女』で描かれた架空の物語のように、人工知能は、人を感動させる手紙を書いたり、人間と自然にコミュニケーションをとって会話したり、さらには豊かな感情を持つこともできるようになります。そして、映画の中で設定されていた時代は2025年でした。

現在、そんなSFのような物語が現実のものになりつつあります。生成AIが人間の働き方、創作、楽しみ方に深く入り込んでいく未来は、もう目前に迫っています。

一方で、現在人気を集めているChatGPTと、それがもたらすAIの産業化の見通しについてはすでに多くの議論が行われていますが、生成AIはまだ非常に初期的な段階にあります。プラットフォーム層は改善しているところで、アプリケーション分野もまだ動き出したばかりであることをはっきりと認識する必要があります。

セコイア・キャピタル社は、現段階までの生成AIの発展を次のように説明しています。「iPhoneが登場した頃のモバイルアプリケーションの状況に似て、注目を集める機能はありますが、内容が乏しく、競争力のある差別化やビジネスモデルが不明確です。しかし、これらのアプリケーションの中には、未来の可能性を垣間見ることができる興味深いものもあります」。

 

 

 

 



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