今日、自動車業界で起きているモビリティ革命は、ユーティリティ車、旅客輸送、輸送業界などに多くの課題をもたらしています。環境配慮への要件とCO2 排出量削減の必要性から、内燃機関からバッテリー駆動システムへの移行はもはや避けることはできません。そこで、この移行に貢献するのが、フエニックス・コンタクトの汎用車両用充電インレットです(図1)。
図1:ユーティリティ車・特殊車両業界では、モビリティ革命が起きています:フエニックス・コンタクトは、排出ガスゼロの駆動システムへの移行に向けて、CCS車両充電インレットを提供しています
電動化に関しては、自家用車がその大きな割合を占めているとはいえ、さまざまなユーティリティ車や特殊用途車にも注意を向ける必要があります。
内燃機関による従来車の総台数は依然として増え続けており、環境問題や気候変動問題が深刻化していることから、社会的な関心と批判はますます高まっています。そのため、今後数十年にわたって、国内の公共交通、国際物流、都市や自治体のサービス車両、農業、鉱業など、さまざまな分野で自動車の電動化が進むことが予想されます。パリ協定で採択された野心的な世界共通目標によると、あらゆる輸送手段の排出ガスを段階的にゼロにすることが求められており、また、欧州グリーンディールの観点から、前述のユーティリティ車や特殊用途車の用途に厳しい規制を既に設けている国も出てきています。必然的に、従来の内燃機関自動車が自動車市場の総台数に占める割合は大幅に減少するはずです。その結果、ユーティリティ車や特殊用途車のメーカーは、シリーズの規模に関わりなく、車両の変更や設計変更を行うことになるでしょう。
排出ガスゼロの電動ユーティリティ車や電動特殊用途車を使用するには、車両の所有者や運用者はインフラを整備し、車庫に充電ステーションを設置するという課題があります。これは、業務環境では比較的簡単で、個人で設置する場合と比べて、その利点は明らかです。充電インフラの設置により広いスペースがあり、グリッドに直接接続することで、グリッド接続の拡張が容易になり、より高い電力伝送が可能になります。また、多くの場合、既存の太陽光発電システムや風力タービン発電機など、電力供給設備への接続を統合できるようになります。
自動車の充電にはさまざまな規格が定められています。DC(直流)充電なら、短時間で大容量の電力を伝送することが可能です。また、電源コンタクトやケーブルの断面積も従来のAC(交流)接続システムのものよりも大きくなっています。そのため、非冷却型DC充電では、最大250kWの充電電力を伝送することができます。このため、DC充電は一般に急速充電と呼ばれます。さらに冷却システムと組み合わせることで、関連規格に準拠して最大500kWの充電電力が可能になります。これが、ハイパワー充電(HPC)と呼ばれる超急速充電です。
DC充電について、主要自動車メーカーはコンバインド充電システム(CCS)を推奨しています。このシステムは、1つの車両用充電インレット(充電ソケット)のみでAC充電とDC充電の両方を可能にするもので、北米向けのタイプ1と欧州向けのタイプ2があります。この充電規格は、自動車業界や充電インフラのプロバイダーによって関連市場で使用されています。またCCS規格は、ユーティリティ車や特殊用途車の急速充電に関して、技術面、実用面において最先端のものであると言えます。
フエニックス・コンタクトは、車両用CCS充電インレットをはじめ、充電技術分野における自動車規格に準拠した試験済みの高性能コンポーネントを提供しています。これらのコンポーネントは、ユーティリティ車や特殊用途車、電気自動車やハイブリッド車、オートバイ、レクリエーション車など、さまざまな車両の改造を専門とするメーカーや企業によって利用されています。DC急速充電やハイパワー充電を車両側でも実現することができます(図2)。
図2:グローバル対応: 車両用CCS充電インレットは、CCSタイプ1規格が北米市場および一部のアジア市場向け、CCSタイプ2規格が欧州市場向けです。世界のその他の地域でも認められている規格です
これまでの技術では、コンバインド充電システム(CCS)は、車両側で最大200Aの充電電流にしか対応していませんでした。世界のEモビリティ市場は、電気自動車のドライバーから、充電インフラのメーカーや運用者に至るまで、これよりも大幅に高い充電電流と充電電力を要求しています。すべての市場関係者は、実際の走行距離の充電が数分で完了する短い充電時間を望んでいます。充電時間が通常、燃料の給油にかかる時間と同程度になるまでは、エンドユーザーは納得しません。
特殊用途車やユーティリティ車を商用利用する場合は、車両運用が最適化されなければ効率性と経済性は達成できないため、ダウンタイムも最小限に抑える必要があります。フエニックス・コンタクトの新しいCCS充電インレット は、ハイパワー充電に至るまでより高い充電電流による充電を可能にし、そんな市場の要求に応えます(図3)。
図3:フエニックス・コンタクトのCCS充電インレットは、ハイパワー充電までの高い充電電流をサポートします
最大95mm²のDCケーブル断面積により、一時電流最大500Aの充電が可能になります。電源コンタクトとHV(高電圧)ケーブル間の最適化された接続テクノロジーにより、接続システムの加熱は最小化されます。また、搭載された温度センサテクノロジーは、DC電源コンタクトの急速かつ高精度な温度測定を可能にします。ここで測定された温度に基づき、要求された充電電流を車両は動的に制御します。
ハイパワー充電の充電インフラは連続運転を前提に設計されているため、高い冷却性能が搭載されています。車両の充電インターフェイスは、走行中に数時間で冷却されるため、次の充電が開始される前にすでに冷却しています。つまり、車両側の電源コンタクトやHVケーブルをあえて冷却する必要はありません。その代わりに、動的な充電プロファイルが車両バッテリーの充電に使用されます。充電プロセスは通常、高い充電電流から始まり、徐々に減少していきます。つまり、高い充電電力であれば、車両の充電はわずか数分でほぼ完了することができます。
優れたシーリングシステムにより、充電ソケットの内部部品はすべて保護等級IP67に対応しています。さらに前面部は保護等級IP6K6K/IP6K9Kを実現しているため、嵌合面からの水の浸入を効果的に防ぎます。
車両用充電インレットは、外形寸法とねじ取り付け形状から非常にコンパクトであり、CCSタイプ1規格もCCSタイプ2規格もこの点において同一です。これにより、メーカーや改造専門会社は、世界のどの市場でも充電ソケット用に同じ設置スペースを計画することが可能になります(図4)。フエニックス・コンタクトの新しいCCS充電インレットは、組み立て済みの状態で提供されるため、車両のHV電源に直接取り付けることができます。温度センサテクノロジーを搭載した車両用充電インレットのほか、ロックアクチュエータ、接続されたHVおよびLVケーブル、嵌合面を保護する防塵キャップも標準装備されています。
図4:充電ソケットに必要な設置スペースは同じ:CCSタイプ1とCCSタイプ2の車両充電インレットの外形寸法とねじ取り付け形状は同一です
フエニックス・コンタクトの電気自動車・ハイブリッド車用CCS充電インレットには、次のような利点があります:
各電源用コンタクトに温度センサを内蔵し、コンタクトの温度を正確かつ継続的に監視
最大500Aの一時充電電流による急速充電
多様なケーブルの断面積とロックアクチュエータにより、様々なアプリケーションに対応可能
CCSタイプ1とCCSタイプ2の充電インレット:設置スペース、ねじ取り付け形状、および外形寸法がいずれも同一
優れたシーリングシステムによる安全性
IATF 16949自動車規格およびISO 9001に準拠して開発・製造
フエニックス・コンタクトの汎用車両用充電インレットは、自動車規格に準拠してテストされた高性能充電インターフェイスを提供します。バッテリー電気自動車やハイブリッド車、オートバイ、レクリエーション車だけではなく、幅広い分野のユーティリティ車、特殊用途車に関しても、その改造を専門とする業界のニーズに応えます。充電インレットの優れた機能により、これらの特殊車両でも安全かつ確実に急速充電が実現します。著者プロフィール
Julia Krüger は、産業オートメーション業界での実績のある経験豊富なマーケティング・コミュニケーション・スペシャリスト。イベント管理、マーケティング、チーム形成、イベントプランニング、ソーシャルメディアマーケティングに精通したマーケティングのプロ。ドイツのパーダーボルン大学で国際ビジネスを専攻、学士号を取得。