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過酷な温度環境下でEV用バッテリの性能を向上させるには? Adam Kimmel

過酷な温度環境でのEV用バッテリ性能を向上させるエネルギーハーベスティングとは?

 

現在、電気自動車(EV)の普及を阻んでいる大きな要因には、バッテリの充電速度のほかに、EV走行距離管理や車室内の熱管理など、各種機能への電力変換効率が挙げられます。極端な温度は、自動車の性能やバッテリ寿命に大きく影響します。エネルギーハーベスティング(環境発電)を活用することで、バッテリ熱管理システム(BTMS)は、過酷な温度環境下でのバッテリ温度を調整することにより、性能や航続距離を大幅に向上させ、充電の高速化、車室内の温度制御を実現することができます。EVが今後の自動車の標準になるには、猛暑(37℃以上)や酷寒(-6℃以下)を含むどのような条件下でも、ドライバーが期待する性能を発揮できなければなりません。

 

EVのエネルギーハーベスティングとは?

エネルギーハーベスティングとは、自動車アプリケーションではエネルギー回収と呼ばれることもあり、身の回りにあるエネルギーを集め、電力に変換する技術のことを指します。太陽光、風、振動、放射熱など、さまざまな形態で周囲に存在するエネルギー源がこれに相当します。超低電力MCUに給電し、軽負荷バッテリの需要を軽減したり、車両性能項目を監視するMEMSセンサに給電することができます。

電気自動車という大きな課題に対して、回収エネルギーを取り入れることで、走行中の自動車の一次エネルギー負荷が増え、効率性が向上し、航続距離が伸びます。また、充電時にも利点があり、充電により回収した廃エネルギーでバッテリを暖めたり、酷寒時には車内を事前に暖めるておくこともできます。

太陽エネルギー、熱エネルギー、電気力学的エネルギーの3種類のエネルギーを「収穫」することで、極端な温度下での熱管理システムを補完し、それによりバッテリを保護し、その性能を向上させることができます。

 

太陽エネルギーハーベスティング

真冬のアメリカ北部では、気温が零下17℃を下回ることがあります。内燃機関(ICE)の最も大きな利点の1つは、燃焼反応によってエンジンや車内を暖める熱源が無限にあることです。EVは、この熱源がないため、車内と25℃~35℃で最高効率を発揮するバッテリを暖めるために、電気抵抗ヒーターを採用しています。このヒーターの電力は、バッテリから直接供給されます。

最近では、沸点が周囲温度より低い冷媒を用いて、電力1単位を消費するごとに3単位の熱エネルギーを生成する、自動車用ヒートポンプの開発が注目されています。冬でも太陽光はあるため、太陽光発電アレイを自動車に搭載することで、さらに多くの太陽エネルギーを取り込むことができます。研究者たちは、太陽エネルギーの回収によって航続距離が約23%向上することを実証しました。また、この方法により、グリッドエネルギーの使用量と充電時間を約10%削減し、バッテリ寿命も同程度向上させることができます。さらに、バッテリが、太陽エネルギーの電力間欠性を緩和させるのに必要なストレージとなることからも、EVは太陽エネルギーハーベスティングに最適であると言えます。

 

熱エネルギーハーベスティング

EVの熱管理には課題がありますが、極端な温度下では、高い温度差により迅速な熱伝導が可能になります。猛暑時には、熱電発電機が温度差を電気に変換し、一次電池の電力を補い、負荷を軽減することができます。

この方法は、周囲温度とバッテリや車内の温度差が大きい場合に最も効率的ですが、アプリケーションの熱の品質が低い(37℃〜65℃)ため、絶対値では5〜10%程度の効率性しかありません。それでも、熱管理システムを最初に作動させる際には、追加の熱によってピーク電力を抑えることができます。

 

運動エネルギーハーベスティング

太陽エネルギーと熱エネルギーハーベスティングは、極端な温度環境での効率性を向上させることはできますが、依然として太陽光の質や周囲の温度条件に左右されます。こうした現実に対応できるのが、自動車の走行中の動作や特性から生じる廃エネルギーを回収する運動エネルギーハーベスティングです。

運動エネルギーハーベスティングの一例として、ブレーキ時のエネルギーの一部を圧電素子を通してバッテリに回収し、再利用する回生ブレーキがあります。熱エネルギーハーベスティングの温度差と同様に、駆動力(この場合はブレーキ力)と、一次電池の消費電力を減らすために利用できる有効なエネルギー回収率には直接の相関関係があります。このプロセスの効率は、熱電発電機よりもはるかに優れており、ブレーキで失われるはずの廃エネルギーを最大70%回収することができます。

運動エネルギーハーベスティングのその他のアプリケーションには、ショックアブソーバや振動センサなどがあります。いずれも同じように、機械的な力が増加するにつれ、より高いエネルギー回収量を得ることができます。

 

まとめ

過酷な温度環境は、バッテリの耐久性、航続距離の低下、乗員の快適性の低下など、自動車メーカーにとって重大な課題になります。太陽エネルギー、熱エネルギー、運動エネルギーハーベスティングを採用することで、熱管理システムを最初に作動させる際に、高負荷を相殺する重要な二次電源を生成することができます。

ここで述べたセンサは、動作範囲内で廃エネルギー源を使用可能な電力に変換するため、極端な温度に対応する電気自動車技術を可能にします。最終的には、太陽光、熱、廃エネルギー回収を行うことにより、自動車の持続可能性を飛躍的に向上させることができるはずです。

 

 

 



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アダム・キンメル氏は

約20年にわたりエンジニア、研究開発マネージャー、技術記事ライターとして活躍。執筆分野は、自動車、産業/製造、テクノロジー、エレクトロニクス市場に関するホワイトペーパー、ウェブサイト広告、ケーススタディ、ブログ記事などに及ぶ。キンメル氏は、化学工学・機械工学で学位を取得。現在、エンジニアリング・テクノロジー関連記事制作会社ASK Consulting Solutions, LLCの創立者兼代表。アダム・キンメルによるコンテンツをもっと見る


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