技術ジャーナリストのトミー・カミングスが毎週、設計エンジニアにとって興味ある「旬な」トピックを取り上げます。
朝、電気自動車をスタートさせるとき、私はいつも離陸準備に入る国際線パイロットになった気分になります。
カードキーのタッチ...完了。ディスプレイパネルのパスワード...入力。座席調整...完了。シートベルト警報...確認よし。ベントコントロール調整...完了。バックミラー...展開。インフォテインメントシステム...準備完了。バックカメラ...異常なし。走行ルート...ええと、何だったっけ? ・・・とまあ、ちょっと大げさですが、感じはおわかりいただけたでしょう。
つまり、多くの機能が搭載されているわけですが、その数は今後も増えてゆきそうです。
ただし、これはハイブリッド車やエンジン車も含め、最近のほぼすべての車に当てはまることなのです。モーター制御の数が増え、ダッシュボードはまるでジャンボ旅客機の計器盤を思わせます。そのダッシュボードの裏には、モーター制御をつなぐ無数のループ配線があり、数百アンペア、数百ボルトもの電力を車体の隅々に供給しています。部品は膨大な数に膨れ上がり、複雑化しているため、性能要件を満たすためには車のモーターがネットワーク化され、慎重に制御される必要があります。
つまり現在、設計エンジニアには、パワーウィンドウ、サイドミラー、座席調整、ベント制御といった単純な機能のために、数百個にもおよぶソリューションを使って、およそ数十個もの小型・中型モーターの制御に対応することが求められているのです。
今週のニューテック・チューズデーでは、インフィニオン・テクノロジーズ、東芝、ロームのモーター制御ソリューションを紹介します。
インフィニオン・テクノロジーズは、電気自動車の開発競争が加速する自動車業界に向けて、モーター制御ソリューションの包括的なラインアップを提供しています。ラインアップには、スマートで先進的なDC(直流)モーター制御、およびBLDC(ブラシレスDC)モーター制御アプリケーション向け半導体なども含まれています。最新の自動車には、スライドドア、シート調整、4輪駆動トランスファーケース、シート換気、リアワイパー、トランクとテールゲート、ウィンドウリフトなどの制御を容易に実現するDCアプリケーションが搭載されています。BLDCモーター、DCモーターのアプリケーションには、パワーサンルーフ、フロントワイパー、ウォーターポンプ、オイルポンプ、電動パワーステアリング、HVACコンプレッサポンプ、ブロワ、フラップなどがあります。インフィニオンの製品ラインは、低集積度、中集積度、高集積度の設計に対応するソリューションを網羅しています。その他にも、マイクロコントローラ、センサ、トランシーバ、電源製品などがあります。
東芝のTB9120AFTG車載用ステッピングモータドライバは、デジタルパルスを機械的なシャフト回転に変換する、車載用ステッピングモーター用途全般に幅広く使用できます。1チップにて駆動可能な2相バイポーラステッピングモータードライバです。TB9120AFTGは、AEC-Q100に準拠し、QFCパッケージ(6mm×6mm)を採用。シリアルペリフェラルインターフェイスではなく、クロック入力インタフェースを備え、また、パルス幅変調(PWM)定電流制御方式を採用しています。詳しい特徴については、こちらのホワイトペーパーをご覧ください。アプリケーションは、HUD(ヘッドアップディスプレイ)用凹面鏡角度調整、二輪用バルブ駆動、HVAC 用バルブ/ダンパなど、小型ステッピングモーター用途全般に対応します。
ロームのBV1HJ045EFJ-CおよびBV1HL045EFJ-C AEC-Q100 PMIC(パワーマネジメント集積回路)は、抵抗、インダクタンス、および静電容量負荷を処理する自動車アプリケーション向けパワーマネジメントICです。いずれもCMOS制御部とパワーMOSFETを1チップに組み込んだハイサイドスイッチです。BV1HJ045EFJ-CとBV1HL045EFJ-Cは、HTSOP-J8パッケージを採用し、AEC-Q100に対応しています。
今日、自動車のダッシュボードには、数百アンペア、数百ボルトもの電力に対応する複雑な自動車モーター制御が簡素化されています。自動車が車輪を付けたICモジュールへと進化している今、車載用モーター制御へのニーズはこれからも拡大することが予想されます。設計エンジニアは今後もますます忙しくなるでしょう。
トニー・カミングスは、米国テキサス州在住のフリーランスライター兼編集者。ジャーナリスト歴は40年以上におよび、 現在、Texas Monthly誌、Oklahoma Today誌にて執筆中。過去にDallas Morning News紙、Fort Worth Star-Telegram紙、San Francisco Chronicle紙などでの執筆経験を持つ。シリコンバレーのドットコム・ブームを取材し、さまざまなメディアでデジタルコンテンツやオーディエンスエンゲージメント編集に携わる。2018年から2021年までマウザー・エレクトロニクスにてテクニカルコンテンツ・プロダクトコンテンツ・スペシャリストとして勤務。