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ナノテクノロジーが蓄電デバイスにもたらす影響とは? Liam Critchley

(画像提供:Love Employee - stock.adobe.com)

長年にわたり、科学者やエンジニアたちは蓄電システムを効率化するために、さまざまな方法を試してきました。例えば、蓄電デバイスの容量を増やす、デバイスを小型化する、急速充電できる蓄電デバイスを開発するなどです。さらには、多くのデバイスの優れた特性を1つのデバイスに取り入れたハイブリッドデバイスも製造しました。その1つがハイブリッド電池ウルトラキャパシタモジュールです。

私たちの日々の生活において電子機器への依存度が高まるにつれて、消費電力の効率化、機器の小型化、充電の高速化がますます求められるようになってきています。開発者は機器の改良を絶えず行い、現在のサイズのままで、あるいはさらに小型化を図りながら、より大きな電力を供給できるよう取り組んでいます。これまでの製造方法では、バルク材料で小型化と効率化を実現するには限界があることから、多くの研究者や業界メーカーはこうした課題の解決策として、現在、ナノ材料に注目しています。この数年間、ナノテクノロジーが機器にもたらした影響は極めて大きく、今ではナノ材料を使った商用蓄電デバイスが市場に出始めており、その多くは民生用機器に使用されています。

なぜ蓄電デバイスにナノテクノロジーなのか?

ナノ材料はさまざまな蓄電デバイスに理想的な特性を持っています。それぞれ互いに異なる特性をもつことがあるため、開発者が蓄電デバイスを改良できる可能性は無限に広がります。

蓄電デバイスにとっての主な利点の1つは、ナノ材料の持つ高い電気伝導率と電荷移動度であり、これにより電子が移動して、より効率的に蓄積されることです。ナノスケールで現れる量子効果も、ナノ材料で強化することができます。一部のナノ材料は量子井戸(エネルギーポテンシャル井戸)を備えており、井戸同士が接近していれば、電子はその間をトンネルすることができます。つまり、一部のナノ材料では、電子はデバイスを構成する何らかの化学結合に妨げられることなく、材料を通過することができ、エネルギーを失うこともありません。

また、ナノ材料はその特性として小さく、薄いため、デバイスの効率を損なうことなく、消費者が望む小型機器を構築することが可能になります。さらにナノ材料は、蓄電デバイスによっては、電荷やイオンの蓄積に使用されるバルク材料と比較して、表面積が広くて高活性になります。

ナノ材料の中には、極めて絶縁性が高く、高電力機器が発する熱よりもはるかに高い熱に耐えることのできる素材もあります。電子機器は世代を重ねるたびにより多くの熱を発するようになりますが、絶縁性のナノ材料は、機器の電気的特性を保護するだけでなく、機器内の熱を放散させることもできます。つまり、ヒートスポットや局所的な損傷が起こりにくくなり、機器の耐用年数を延ばすことができるのです。

さまざまなナノ材料が蓄電デバイスの特性に効果をもたらしていますが、デバイスの複数の特性を向上させたり、ナノ材料同士の相乗効果を引き出してより高効率なデバイスにするために、複数のナノ材料を使用することも珍しくありません。異なるナノ材料を組み合わせることでより優れた効果が得られることがよくあります。その一例として、高伝導性ナノ材料の上に電気絶縁性(誘電性)ナノ材料を重ねることが挙げられます。これにより、周囲への電力損失を低減し、電荷キャリアを保護し、場合によっては、電子の方向を操作することができます。

ナノテクノロジーが活用される領域

ナノ素材は、現在さまざまな蓄電システムに採用されています。その中でもバッテリは最も一般的であり、商用バッテリには現在、ナノ材料が使用されています。リチウムイオンバッテリはメーカーにとって最大の市場であるため、最も影響力のある領域ですが、ナノ材料は商用リチウム硫黄(Li-S)バッテリにも使用されています。バッテリでナノ材料が使用されるのは主に電極ですが、固体またはゲル状で電解質としてナノ材料を使用しているバッテリもあります。

バッテリの小型化が鍵となるもう1つの重要な領域として、幅広い分野で活用が進む、柔軟性の高いウェアラブル電子デバイスがあります。スタンドアロンデバイスのほかにも、蓄電力を使用するさまざまなスマートテキスタイル(eテキスタイル)が開発されており、こうしたデバイスは、ナノ材料を使用して小型化され、効率化されたからこそ実現したと言えます。

バッテリのほかにも、ナノ材料は次世代のスーパーキャパシタに採用されています。バッテリとスーパーキャパシタをハイブリッドしたモジュールを開発し、双方の利点を活かしながら、双方の問題点を解消する試みも行われています。

これらの蓄電システムは、現代のさまざまなテクノロジーに使用されており、ナノテクノロジーによる蓄電デバイスは、小型(携帯型)システムから、電気自動車などの大型の蓄電システムまで大きな可能性を秘めています。実際、ナノ材料は、電気自動車に現在使用されているさまざまなバッテリの充電・蓄電能力の低さを改善する方法として、最も期待されています。

ナノテクノロジーによる蓄電デバイスは、大規模なシステムに対応する能力を備えていますが、現在は携帯機器やハンドヘルド機器においてより普及が進んでいます。その代表的な用途として、ナノモノのインターネット(IoNT:Internet of Nano Things)で使用されるスマートフォンが挙げられます。IoNTではより小さなセンサが必要とされ、ナノテクノロジーベースのバッテリは、医療センシングから環境モニタリングに及ぶ幅広い用途で、そのような機器に電力を供給する方法となります。

まとめ

ナノ材料は、さまざまな蓄電デバイスの性能、大きさ、充電能力の向上に非常に適した特性を持っています。電子機器の小型化と効率化への要求がますます高まるなか、ナノ材料は蓄電デバイスにとって今よりもさらに大きな役割を果たすことになるでしょう。すでに、幅広い民生用携帯機器に向けた商用蓄電デバイスが市場に出始めています。この市場は、ナノテクノロジーを採用するエンドユーザ・メーカーが増えるにつれて、今後も拡大していくものと予想されます。

資料

  1. “Nanotechnology in Batteries (Nano Battery).” Accessed November 28, 2022. https://www.understandingnano.com/batteries.html.
  2. Berger, Michael. “Nanotechnology E-Textiles For Bio-Monitoring And Wearable Electronics.” Accessed November 28, 2022. https://www.technicaltextile.net/articles/nanotechnology-e-textiles-for-bio-monitoring-and-wearable-electronics-3762.

 




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