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車輪付きスマートフォン・コネクテッドカー 最適経路から近隣のドライバ情報までなんでもつながる未来に Steven Keeping

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今日、人々が移動に費やす時間はますます増えています。平均的なアメリカ人は週に8時間以上を車の中で過ごしていると言われています。

さらに、テキサス A&M交通研究所(TTI)の調べによると、アメリカ人は交通渋滞により平均で年間54時間もの時間を失っているそうです。ワシントンD.C.とロサンゼルスでは、状況はさらに深刻で、渋滞によって失われる時間は、それぞれ年間102時間、119時間にものぼります。

この問題は労働時間の損失にとどまりません。交通渋滞は燃料の浪費につながり(米国では年間33億ガロン)、大気中の温室効果ガスの増加をもたらします。2019年の調査によると、燃料消費の無駄と労働時間の損失は、米国で1,660億ドルの経済損失になると推定されています。

自動車メーカーはこのような課題に絶えず取り組んできました。今では自動車は、遮音性、シートの快適性、空調システムにより、まるで繭の中にいるような快適さを提供します。また、アンチロックブレーキ、エアバッグ、クラッシャブルゾーンなどの革新的な技術のおかげで、事故による生存率も上がりました。渋滞の退屈を紛らわすには、デジタルラジオ放送、スマートフォンの音楽、後部座席用のDVDプレーヤーなど、さまざまな車内エンターテインメントが利用できます。

 

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図1:交通渋滞は、2019年に米国で約1,330億ドルに相当する燃料と労働時間の損失をもたらしました。(FrimuFilms / shutterstock.com)

さらに近年、車内システムは、インターネット接続によって進化しています。インターネットへの接続により、ドライバーも同乗者も、まるで自宅やオフィスにいるようにビジネスネットワークやソーシャルネットワークに「つながった」ままでいられ、渋滞に巻き込まれても生産的に時間を過ごすことができるようになりました。

しかし、インターネットの接続性がさらに進化したらどうでしょうか。ドライバーや乗員が何もしなくても、小さな温度センサから、エンジン管理ユニット、衛星ナビゲーションまでのすべてが、インターネット経由で情報の送受信ができるようになるとしたら。そのようなコネクティビティこそ、自動車に乗る人の安全と快適性をいちだんと高め、今日の交通渋滞による数々の課題を解決してくれるはずです。そんな未来のクルマのことを「コネクテッドカー」と言います。

 

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インターネットとモバイルネットワークの融合

IoTは、主なデータ入力源を人からコンピュータ、機械、センサに置き換えている点で従来のインターネットとは異なっています。IoTにより、人の介入を必要とせず、物理的な世界はインターネットに直接つながるようになります。

これは決して小さなことではありません。間違えやすく飽きやすいヒトとは異なり、データを収集するという使命を与えられたシステムは、間違えることも飽きることもなく、与えられた任務を遂行します。1999年に「Internet of Things(モノのインターネット)」という言葉を生み出した人物として知られるケビン・アシュトンは、次のように言っています。「もし、人の手を借りずに収集したデータを使って、モノについてすべてを知ることのできるコンピュータがあれば、あらゆるものの追跡と計算が可能になり、無駄、損失、コストが大幅に削減できるだろう。」

ネットワーク会社のシスコシステムズ社は、IoTについて、「インターネットプロトコル(IP)ネットワーク(家庭やオフィスにある数百万個のコンピューターと数十億個のその他のIPデバイス)とモバイルネットワーク(インターネットに接続可能な携帯電話からの数百万の音声通信と数十億のデータパケット)を融合して、単純なセンサ、機械、さらには自動車などの複雑なモノにいたるまで、共通のインフラを使用して、1兆のエンドポイントからなるネットワークを形成すること」であると説明しています。

自動車業界では、「無駄を無くし、ロスを減らし、コストを削減する」という言葉が繰り返し唱えられており、自動車メーカーは、製品を提供するシリコンベンダーとともに、IoTを最も熱心に推進しています。その理由の1つは、エンジン管理ユニット(EMU)などの主要コンポーネントを中心に、車載ソフトウェアのアップデートをOTA(Over The Air:無線経由)で行うことにより、コストの削減を図ることができるからです。

これにより、何百万台もの車にリコールコストを発生させることなく、重要な修正を行うことができます。とはいえ、自動車メーカーの意図が何であれ、自動車へのIoT導入は、消費者にとっても大きな魅力があります。

 

高度道路交通システム(ITS

IoTは、自動車のあらゆる側面で活用されるようになります。たとえば、自動車のメカニズム、交通を支える外部インフラ、乗員の快適性や娯楽は、すべてつながっているでしょう。コネクテッドカーは、安全・道路支援をはじめ、車内・車間通信、スマート交通制御、スマート交通管制、道路通行料自動徴収システム(ETC)、車両制御などが統合された高度道路交通システム(ITS)のメリットを受けるようになります。

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図2:コネクテッドカーは、高度道路交通システム(ITS)のメリットを受けるようになります。(画像:ETSI)

IoTに接続された自動車は、位置、速度、方向に関する情報を提供し、それによって強力なサーバーが交通の流れを解析し、ボトルネックを予測し、交通渋滞の発生時には通行を制御します。車内のドライバーには、この先に渋滞があることが伝えられ、すいている経路が案内されます。車外では、これらのコンピュータによる渋滞緩和策として、可変速度制限、スマート信号機・標識、交通流の最適化、可変料金制などがあります。これまでも、道路に設置されたモニタや誘導ループを使って交通流を計測するシステムは既にありましたが、コネクテッドカーから直接得られるデータは、より正確な情報をより広範囲にわたりリアルタイムで提供します。コネクテッドカーに供給されるデータも運転体験の向上につながります。いつの日か激怒したドライバーによる「ロードレージ」も過去のものとなるかもしれません。次世代のコネクテッドカーによって、リアルタイムで交通渋滞を回避することも、すぐに駐車スポットを見つけることも、さらにはGPSを使って近くの充電スタンドを探したり、その価格を比較したりすることも可能になります。シアトルに本社を置くINRIX社は、コネクテッドカー向けのツール開発を行っています。同社は路上駐車や駐車場を見つけるためのツールなども開発しており、また、1日あたり20億ものデータポイントから予測できるリアルタイム交通情報を提供し、データは車載の交通サービスに活用されています。

コネクテッドカーは、ドライバーと直接コミュニケーションが取れるので、渋滞のある地域を回避する方法も案内してくれます。さらには将来的に、渋滞が激しい区間は、リモートコンピュータに運転や走行を任せ、渋滞解消後に運転をドライバーに戻すことも可能になるかもしれません。

ただし、渋滞の解消がドライバーの健康にも国の経済にも有益であるのは間違いないのですが、自動車メーカーや交通局にとっての最優先事項は、やはり安全です。ですから、当然のことながら、これらの企業や省庁はIoTを活用して運転の安全性を高める方法を模索しています。

そもそも事故を起こさないことが、死傷者を出さない最善の方法です。エンジニアたちは、渋滞回避の概念をさらに応用して、他のドライバーの運転技術をリアルタイムで把握し、衝突リスクを低減するシステムの開発を始めています。ドライバーにはスコアがつけられ、システムは運転技術の低いドライバーを検知すると警告してくれます。今日のGPSシステムが、赤信号カメラが近くにあることをドライバーに静かな電子音で教えてくれるのに似ています。

 

IoTを活用した他の事故回避スキームには、ITSを利用してコネクテッドカーからのデータを分析し、2台の車が同じ高速道路に同時に乗り入れないようにするものもあります。その一例がオーストラリアのアデレードを拠点とするCohda Wireless社の技術です。Cohda社のシステムは、GPSプラットフォームを利用して車の進行状況に関するデータを提供します。危険が検出されると、ドライバーは事故を回避するよう直ちに警告を受けます。同社によると、この技術により、ドライバーの認識力が広がり、視界を遮る建物があっても、あらゆる脅威に気づくことができるようになります。

 

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図3:Cohda Wireless社のITSは、死角にある潜在的な危険をドライバーに警告します。(画像:Cohda Wireless)

欧州連合(EU)は、コネクテッドカーをコンセプトから現実のものにするために主導的な役割を果たしています。欧州電気通信標準化機構(ETSI)と欧州標準化委員会(CEN)という2つのヨーロッパの標準化団体によって、コネクテッドカーの実現に向けた規格が既に策定されています。このような標準化によって、さまざまなメーカーによる自動車間の通信が可能になります。

EUは、すべての新型車に対して、事故発生時に救急サービスに自動通報する技術を搭載することを求めています。車内の人間に意識がない場合も、この技術によって車のいる場所を救急サービスに知らせることができます。また、車種、衝突した場所、使用燃料の種類、さらには衝突時に装着していたシートベルトの数など、重要な情報も伝えられます。

 

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コネクテッドカーの車内

未来のコネクテッドカーの車内は、一見すると今日の自動車とそれほど変わらないように見えるかもしれません。大型のヒューマンマシンインターフェース(HMI)が、今日と同様、ダッシュボードの大半を占めるでしょう。また、現在の自動車には、信頼性が実証されたネットワーク電子機器が低価格化の恩恵も受け、既に多数搭載されていますが、その多くはIoTへの接続にまだ適応できていないでしょう。

しかし、この適応にはかなりの対応が求められます。今日の自動車には、有線と無線で構成された高度なネットワークが網羅されています。ダッシュボード計器から、安全機能、パワートレイン、車載インフォテインメント(IVI)システムまで、あらゆる機器を制御する電子制御ユニット(ECU)は、これらのネットワークの重要な部分を担っています。一般的な自動車に搭載されたこれらの機器の数は、過去10年間で倍増し、今では多くの自動車に125個以上のECUが搭載されています。また、道路状況から、先行車との距離、走行速度、加速度、GPSによる位置情報、さらには車内温度やシートベルトの張り具合、ドライバーの注意力にいたるまで、あらゆるものを検知できるさまざまなセンサも搭載されています。

スマートフォンやタブレット端末とダッシュボードに搭載されたHMIとの接続には、一般にBluetooth®などのワイヤレス技術が使用されています。パワートレイン、シャーシ、ボディ、制御、安全性などを監視するセンサなど、今日の自動車に搭載されているその他のセンサのほとんどは、有線のCAN(Controller Area Network)またはLIN(Local Interconnect Network)バスを使用しています。計測器クラスタもCANバスでネットワークに接続されています。すべてのネットワーク接続は、機能を監視するセントラルゲートウェイで統合され、オンボード診断データリンクコネクタ(OBD DLC)を介して外部のコンピュータからアクセスすることができます。

IoT対応車のこの従来のレイアウトにも変更があり、CANバスやLINバスに代わって、各種システムへの接続にイーサネットを採用したり(イーサネットは最近、複数の自動車メーカーが車載インフォテインメントバスに採用)、センサやECUを集約してネットワークを簡素化するためにミニハブを導入することなどが考えられます。

すべてはOBD DLCを保持する車載セントラルゲートウェイに接続されますが、自動車にはインターネットへの無線接続を管理するテレメトリモジュールも搭載されています。 自動車自体は、インターネット上では1つの「モノ」にすぎないのかもしれませんが、さまざまなシステムやサブシステムが情報を生成しており、それがIoTにとって最も価値あるものになります。自動車のIoT接続を検討する上で、自動車とは、すべての車載システムやサブシステムが連携し、より広いネットワークに情報を送受信することにできる大きなハブであると考えるのがいいのかもしれません。

今日、車内のシステムから生データを取得し、それを外部サーバーに正しい形式で送信し、さらに戻ってきた情報を受信して発信するために必要な計算能力と知能は、車載セントラルゲートウェイにあります。 しかし、近い将来、車載センサには、ゲートウェイを単に「ダム型」の転送装置として使用して、クラウド上のサーバーに直接通信できる技術が搭載されるかもしれません。 Bluetooth v5.1などのソフトウェアには、独自のIPアドレスを持つワイヤレスセンサがインターネットでリモートデバイスと直接通信するのを可能にする基盤技術がすでに搭載されています。

 

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図4:コネクテッドカーは、検索機能、交通事故や事故などのリアルタイム情報にアクセスできる、車輪付きスマートフォンです。(ambrozinio / shutterstock.com)

 

まとめ

IoTは、運転体験の向上と交通事故の減少を約束します。しかし、その可能性を完全に引き出すには、セキュリティ、安全性、規制、業界間の標準化、業界ダイナミクスとライフサイクルの変化、初期段階の市場規模による制限など、さまざまな障害に取り組まなければなりません。コネクテッドカーの未来は間違いなく明るいはずですが、導入への道のりには、まだ多くの課題が残されています。 

 



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スティーヴン・キーピングは、英国ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得後、Eurotherm社とBOC社のエレクトロニクス部門に7年間勤務。その後、Electronic Production誌社を経て、13年間、英国、オーストラリアのTrinity Mirror、CMP、RBIにて「What's New in Electronics」、「Australian Electronics Engineerin」誌を含む、エレクトロニクス製造・テスト・設計関連記事の上級編集者・出版者として活躍。2006年、エレクトロニクス専門のフリージャーナリストに転身。現在、シドニーを拠点に活動。


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