今日のAIや深層学習(ディープラーニング)は、2,000年以上前から蓄積されてきた世界中の優秀な発明家たちの功績に成り立っています。AIがどこに向かっているのか、現在の状況になるまでの経緯から理解していきましょう。AIはどこから始まったのか、その真相に迫ります。
AI研究の歴史は1世紀以上にわたり、最近ではますます脚光を浴び非常に重要な分野になりました。パターン認識と機械学習においては特に、経験から学習する人工ニューラルネットワーク(NN)の比較的新しい呼び方である「ディープラーニング(DL)」が大変革をもたらしました。今やDLは、産業及び日常生活で頻繁に使用されています。スマホの画像及び音声認識、言語の自動翻訳などがその一例に当たるでしょう。
英語圏諸国では、DLの起源は自国にありと信じている人が多いですが、実際には、DLは英語圏以外の国で発明されました。広範囲にわたるコンピューティングの歴史の中からAIに絞って見てみましょう。
初期コンピューティング時代のパイオニアたち
最古の機械式計算機に数えられる、紀元前1世紀のギリシャで作成された「アンティキティラ島の機械」があります。さまざまな大きさの37個の歯車で動作し、天体事象を予測するのに使われていました(写真1)。
写真1:紀元前1世紀のギリシャで作成されたアンティキティラ島の機械 種々サイズの37個の歯車で構成・天体事象の予測に使用されていた(写真:DU ZHI XING/Shutterstock.com)。
アンティキティラ島の機械
その後1505年にニュルンベルクのピーター・ヘンライン(Peter Henlein)が丸型懐中時計を完成させるまでの1,600年間、その精巧さを超えるものは現れませんでした。しかしヘンラインの機械は、アンティキティラ島の機械と同じく、いわゆる入力した数値から結果を計算する機械ではなく、単にギア比を使って時間を振り分けたものでした。分数を出す際は秒数を60で割り、時間数を出す際は分数を60で割ります。
基礎算数用自動計算機と歯車式計算機パスカリーヌ
しかし1623年、テュービンゲンのヴィルヘルム・シッカート(Wilhelm Schickard)が、史上初の基礎算数用自動計算機を発明しました。その後1640年にはブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)が歯車式計算機パスカリーヌを、1670年にはゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz)が「段付き歯車」と呼ばれた機械式計算機を発明し、これは足し算・引き算・掛け算・割り算の四則演算すべてを可能にした最初の計算機でした。1703年にライプニッツは、現在事実上あらゆるコンピューターで使われている二進法のアプローチについて説いた「Explanation of Binary Mathematics(二進法算術の解説)」という書著を発行しています。
数理解析やデータ分析はここからさらに発展し続けました。1800年頃には、カール・フリードリヒ・ガウス(Carl Friedrich Gauss)とアドリアン=マリ・ルジャンドル(Adrien-Marie Legendre)によって、線形回帰による最小二乗法のパターン認識(「シャローラーニング」ともいわれる)が生み出されました。ガウスがこの技術を使用して過去の観測を分析し、さまざまな手法で予測子のパラメータを調整することで小惑星ケレスの新しい位置を正確に予測、そして再発見したことは有名な話です。
パンチカードでプログラムできる自動織機
この頃に実用的なプログラム制御式機械第一号がフランスで誕生しました。パンチカードでプログラムできる自動織機です。つまり1800年頃に、ジョゼフ・マリー・ジャカール(Joseph Marie Jacquard)と仲間たちが世界初のプログラマーになったということです。
1837年になると、イギリスのチャールズ・バベッジ(Charles Babbage)が「解析機関」というさらに汎用的なプログラム制御式機械を設計しました。当時はまだライプニッツの二進算術ではなく面倒な十進法に基づいていたため、誰もこの設計に成功していませんでした。しかし1991年になると、バベッジのそれほど一般的ではない階差機関2号機の試作機が実働していました。
20世紀の初頭には、インテリジェンスによる機械が著しく進歩しました。ここからは、1900年以降に起きたAIの発展に関連する出来事をご紹介します。
写真2:イギリスのアラン・チューリングは1936年、現在は「チューリングマシン」といわれている理論的概念を元に一般的なプログラミング言語LISPを再公式化(写真:EQRoy/Shutterstock.com)
1970年までの歴史についてはこれくらいにしておきましょう。続きは、また次回のブログでさらに詳しくご紹介します。