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マイクロファクトリーの到来 JJ DeLisle

インダストリー5.0はマイクロファクトリー革命をもたらすのか

 

何十年もの間、製造業の世界では、効率を高め、製造コストを下げるために、少ない品種を多量に生産する「少品種多量生産」が主流でした。その結果、半世紀以上にわたって、よりコストの安い海外への生産移転が進み、世界は巨大なグローバルサプライチェーンと輸送システムの課題を負うことになりました。1990年代、日本の機械技術研究所(MEL)が「マイクロファクトリー」という概念を導入しましたが、つい最近まで、この考え方が製造業の世界で取り上げられることはありませんでした。

ところが、ここ数年で、マイクロファクトリーが注目されるようになり、その機能に対する需要も著しく増加しています。諸経費、施設面積、環境への影響を(持続可能性対策や国内の地方移転により)低く抑えながら、顧客の要求やカスタマイズに迅速に対応できる、小規模で機敏なマイクロファクトリーを構築しようと、現在では、その技術、インフラ、市場への需要が高まっています。

ついにマイクロファクトリー時代が到来したのでしょうか? この記事では、マイクロファクトリーという概念の起源を遡りながら、マイクロファクトリーの特徴について取り上げ、マイクロファクトリーの未来について考えたいと思います。

 

マイクロファクトリーの起源

 

マイクロファクトリーという概念の起源は比較的単純です。日本の機械技術研究所(MEL)は、効率性とモジュール性の向上を実現するために、従来の製造装置のサイズ、重量、設置面積、コストを相対的に削減する取り組みを行っていました。その取り組みにより、ラピッドプロトタイピングマシンや小型製造システムでは現在比較的一般的となっている、セル式およびモジュール式の製造機械形式が誕生しました。セル方式の重要な特徴は、自動化システムにより、工作物や組立品をステーション間で自由に移動させ、予測されるカスタマイズや機能追加に対応できることです。この製造方式は、一般的な大量生産における直線的な生産ラインとは大きく異なります。

製造機械の物理的性質は別として、マイクロファクトリーの概念は、高度にカスタマイズされた「超地域密着型」製品を提供していた、かつての職人や匠(たくみ)たちの多品種少量生産の理念を基本としています。しかし、多くの地域では労働規制があるため、多数の人間の労働者を擁するのには、コスト、敷地面積、インフラに法外なコストがかかり、困難です。したがって、マイクロファクトリーが成功するかどうかは、自動化、クラウドインフラ、インテリジェンス、接続性を活用し、利益を上げられるかどうかにかかっています。

何十年もの間、マイクロファクトリーの概念は、ラピッドプロトタイピングを実現するための革新的な方法であったり、あるいは、製品の特殊性から、よりコンパクトなターンキー製造ノードを必要としながらも、従来の製造システム全体を構築する時間やリソースのない顧客の差し迫ったニーズに応えるためのものでした。

現在、持続可能性に向けた世界的なトレンドに伴い、企業、産業界、消費者のすべてが、輸送や産業プロセスで発生する二酸化炭素排出量や環境への影響を削減することに注目しています。インダストリー 5.0 は、この持続可能性への取り組みを牽引する原動力の 1つとして登場し、より環境に優しく社会的責任のある産業運営を実現するために、人間の創造性と自動化の効率性を融合させることを強調しています。マイクロファクトリーのもうひとつの重要な信条は、総合的な観点から効率を高めて廃棄物を削減することです。需要の発生源に近い場所に製造能力を分散させることで、輸送の経費を削減し、顧客への迅速な納品を可能にします。また、マイクロファクトリーは原材料の供給源や、さまざまな製品を製造するのに必要な原材料や基礎製品の供給源に極めて近い場所に開設することができるため、輸送にかかる経費をさらに削減することができます。

 

マイクロファクトリーの特徴

 

マイクロファクトリーには、こうした概念を実現し、製品の製造に付加価値を与える重要な要素がいくつかあります:

  • 小フットプリントと超地域密着性

  • 自動化、機械学習(ML)、人工知能(AI)

  • 接続性と通信インフラ

  • インテリジェンスとデータ

  • 応答性

  • 低い設備投資

  • 規制と税の緩和

小フットプリントと超地域密着性

定義上、マイクロファクトリーは、生産効率を高め、施設間の材料や製品の輸送コストを抑えるために、省スペース化されています。マイクロファクトリーの概念である小さなフットプリントは、これらの工場が従来の製造施設を建設できない場所に設置できることを意味します。これは、利用可能な敷地や、工場規模を制限する各地の規制によって決まります。

マイクロファクトリーの小フットプリントの副産物として、主要な原材料や基礎製品、あるいは顧客の需要の発生源にすぐ近くに工場を配置することができます。工場配置の柔軟性が高まれば、マイクロファクトリーのサプライチェーンや配送能力を従来の工場よりもはるかに最適化できる可能性が生まれます。

自動化、機械学習(ML)、人工知能(AI)

マイクロファクトリーの概念の鍵となるのは、さまざまな加工や組み立ての要件に合わせて迅速に再プログラムしたり、モジュール式に構成できるセル生産方式ステーションです。産業用ロボットと自動化は、歴史的に非常に高価であったため、ほとんどの製造システムは、極めて専門化されたリニア生産方式の大量生産装置を採用していました。現在、市場に出ている定置型ロボットおよび自律移動型ロボット(AMR)システムは、迅速にプログラミングや変更を行い、幅広い運用機能を実現することができます。自動ツール交換とモジュラーツーリングシステムにより、多くの新しい自動化システムは、さまざまな専用製造システムのタスクを行うように構成することができます。ML/AIビジョンとハンドリングシステムがより利用しやすくなり、ML/AIロボットコントローラーを使用して、新人技術者を訓練するのと同じように、人間の指示でタスクを実行するようロボットを迅速に訓練することも可能になりました。しかも時間とコストも大幅に削減できます。

自動製造ステーションは、人間のオペレーターのための専用スペースや安全マージンを確保する必要がないため、従来の製造システムよりもはるかにコンパクトにすることもできます。また、自動化装置には遠隔オペレーターを活用することで、工場に必要なスペースと人員をさらに削減することも可能です。ネットワーク化されたクラウドベースのサポートインフラと十分な自動化により、遠隔オペレーターは複数の製造ステーションを同時に、場合によっては複数のマイクロファクトリーにまたがってプログラムし、監視することができます。それに対して、一般的な製造業では、各拠点に同じように経験を積んだオペレーターを配置する必要があります。

接続性と通信インフラ

遠隔操作、あるいは機械やオペレーター間の自動調整を行うには、高度な通信インフラが必要です。このインフラは、センサ、アクチュエータ、コントローラ、ロボットシステム、自動化ステーション、セキュリティ、消防・安全システム、そしてローカルまたはリモートの人間のオペレーターとの間のデータ交換を同時に処理しなければなりません。これは容易なことではなく、大規模な通信とネットワークの設定が必要になります。しかし、この技術は以前よりはるかに容易に利用できるようになり、現在では製造業向けの専用の有線/無線通信システムがあります。現在、多くの主要な無線規格が、メッシュネットワークと互換性のあるマシン・ツー・マシン(M2M)通信プロトコルを組み込み、産業用モノのインターネット(IIoT)や一般的なIoTアプリケーションへの対応を強化しています。

新しい衛星接続オプションとインターネットサービスにより、数年前であればインターネット接続にアクセスできなかったような遠隔地でも、そこそこのデータスループットを必要とするマイクロファクトリーを設置することが可能になりました。現在では、比較的高いデータレートを持つ衛星モジュールやセルモジュールが、AMRやロボットシステム自体に搭載できるほど小型化し手頃な価格になり、セル規模でのマイクロファクトリー接続がさらに可能になりました。

インテリジェンスとデータ

マイクロファクトリーにおいて高度な自動化に向けたインフラが求められているのは、マイクロファクトリーが膨大な量のデータを生成する可能性があるからです。このデータは、品質保証と追跡のために適切に取り扱い、保存する必要がありますが、さらに製造プロセスの効率を向上させる上で利用できる貴重な洞察の情報源となります。このデータの一部は、インテリジェンス製品としてパッケージ化され、販売される可能性さえあります。

応答性

よりモジュール化された製造・加工システム、セル生産プロセス、自動化により、マイクロファクトリーシステムは、顧客やクライアントの要求に合わせて迅速に再構成することができます。例えば、工場は、よく売れる製品や製品ラインをさまざまなバリエーションで継続的に製造したり、顧客が直接注文した製品をオンデマンドで迅速に製造したりすることができます。また、市場機会に応じて新製品を製造するためにすべて再構成したり、1回の注文で1個から数千個までの幅広い個数を製造することもできます。顧客のニーズに対するこのような敏捷性と柔軟性、さらには超地域密着型の施設配置によって実現する迅速な配送や材料調達により、マイクロファクトリーは従来の工場の数分の1で市場のニーズや顧客の注文に対応することができます。

低い設備投資

自動化と効率が重視されるということは、マイクロファクトリーの製造や製造ステーションが個別には比較的高コストになる可能性があることを意味します。しかし、これらのシステムは、従来の製造システムの要件を満たすことができるはずです。さらに、マイクロファクトリーの概念全体は、当然のことながら従来の工場よりもはるかに低い設備投資で済む、小規模で機敏な設置に焦点を当てています。マイクロファクトリーの概念を活用することで、中小企業や新興企業は、高金利のローンや融資を伴う高額な初期設備投資を負担することなく、ビジネスの成長に合わせて、顧客基盤や材料供給源の近くにマイクロファクトリーを開設することで、限られた資本支出で自然に成長し、規模を拡大することが可能になります。大規模な工場では、施設の建設、設備の購入、製造ラインの立ち上げ以前に、必要な不動産の購入や立地規制をクリアするために多額の借入金が必要になる傾向があります。マイクロファクトリーをベースとしたビジネスでは、利用可能な資本で規模を拡大しながらマイクロファクトリーを開設することで、このような事態を回避することができます。また、このアプローチでは、市場環境の変化に応じて迅速に方向転換できる専用の製造施設に資本を投下することで、リスクを最小限に抑えることができます。

規制と税の緩和

従来の工場に比べ、設置面積、機械台数、電力、インフラなどの要件が緩和されるため、マイクロファクトリーは各地域における高額な規制や税金を回避できる可能性があります。工業地区や地域の法律や規制の多くは、明らかに特定の規模の製造施設を対象としており、小規模なマイクロファクトリーは、同じ法律、規制、さらには税金の対象にならない可能性があります。

 

マイクロファクトリーの未来

 

製造業と世界貿易の多くのトレンドは、マイクロファクトリーを導入した多品種少量生産に移行していることを示しています。規模の経済は、依然としてマイクロファクトリーの自動化機能による効率向上をはるかに超えているため、マイクロファクトリーが短期的に従来の大規模工場に取って代わることはないでしょう。しかし、マイクロファクトリーは、特定の多品種製品の製造において重要な役割を果たし、また、ある地域に必要な製造能力の不足を補うようになるかもしれません。

 



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ジャン=ジャック・ドリル(Information Exchange Services社長)
ニューヨーク州ロチェスター工科大学(RIT)にて電気工学の理学士号、理学修士号を取得。在学中はRF/マイクロ波を研究するほか、学内雑誌への執筆、学内最初の即興コメディグループへの参加など活動多数。学位取得前から、Synaptics社のICレイアウト・自動テスト設計エンジニアとして契約。同軸内アンテナおよび無線センサ技術の開発と特性評価など、6年間の独自研究を通じて、数々の技術論文を提出、米国特許を取得。

学位取得後、キャリアを求め、妻アリーヤと共にニューヨーク市に移転。雑誌「Microwaves & RF」のテクニカルエンジニアリングエディターとして従事し、 RFエンジニアリングとテクニカルライティングへの情熱とスキルを活かし活躍。

その後、技術的に有能なライターと客観的立場の業界専門家の必要性を痛感し、RFEMX社を設立。また、この目標を達成するため、会社の対象領域とビジョンをさらに拡大し、Information Exchange Services(IXS)を設立する。


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